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コラム

2019.02.17

ノンアルビールの味に酒税法あり

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 ノンアルコール飲料の需要はハンドキーパー・休肝日をつくりたい方・妊婦さん・酔いたくないビジネスシーンなど年々高まっています。一方で、ノンアルコールビールとビールの違いに絶句してしまう経験をした方も多いのではないでしょうか。
 なぜこんなにも味が違うのか。今回はそんなノンアルコールビールの味と酒税法の意外な関係をみていきたいと思います。


1
「日本ノンアルビール」 vs 「海外ノンアルビール」

 日本のノンアルコールビールは各社から発売され「麦のくつろぎ」(サッポロビール)など素晴らしい製品も登場しています。
 ただ、多くの日本のノンアルコールビールはビール本来のコク・風味と比べるとかなり違和感があるのが現状ではないでしょうか。
 製品の表示を見ると「ビールテイスト飲料」「炭酸飲料」とあります。誤解を恐れずに言うならばジュースとしてビールを再現しようとしていることになります。
 一方、海外のノンアルコールビールの中に美味しいものをいくつか発見しました。その1つがドイツの「ヴェリタスブロイ」(PANAVAC)。コクも風味も素晴らしいです。
 なぜ日本のノンアルコールビールとここまで違うのか。
 ビールに近いと感じた海外のノンアルコールビールに共通していたのは「製法」です。いずれもまずは本来のビールを造り、ビールからアルコールを取り除くという製法でした。

2
なぜアルコールを除去する製法で造らないのか

 日本ではノンアルコールビールをアルコールを除去する製法で造らない理由の1つに設備コストがあります。
 アルコールを除去する製法は、蒸留してアルコールを飛ばす方法から、人工透析で使う技術を利用してアルコールを取り除く方法まで様々です。この高額な設備はネックになります。
 しかし、アルコールを除去する製法にしない最大の要因は酒税法にあります。

3
ノンアルコールビールに酒税法?

 そもそも酒税法はアルコール1%未満の場合には適用されないためノンアルコールビールには関係ないとも思えます。
 確かに、現在日本の各メーカーが行う製法では関係ありません。しかし、アルコールを除去する製法の場合は一旦実際のビールを造るため酒税法が適用されます。

<酒税法>
第二条 この法律において「酒類」とは、アルコール分一度以上の飲料(薄めてアルコール分一度以上の飲料とすることができるもの(アルコール分が九十度以上のアルコールのうち、第七条第一項の規定による酒類の製造免許を受けた者が酒類の原料として当該製造免許を受けた製造場において製造するもの以外のものを除く。)又は溶解してアルコール分一度以上の飲料とすることができる粉末状のものを含む。)をいう。

4
アルコールを除去する製法を阻む酒税法とは

 酒税法では酒造免許を取得し年間ビールを60キロリットル(500ml缶12万本分)生産しなくてはならないと規定されています。
 そして、税務署の方に確認したところ「本来のビールからアルコールを除去する場合、ビールの破棄の届出が必要」とのことです。
 つまり、現在の酒税法のもとでは60キロリットルの年間生産を維持した上で+αの部分でアルコールを除去する製法のノンアルコールビールを製造するしかないことになります。
 結局ビールよりコストがかかる上にかなりの資金力がないと厳しいということになります。

<酒税法>
第七条
2 酒類の製造免許は、一の製造場において製造免許を受けた後一年間に製造しようとする酒類の見込数量が当該酒類につき次に定める数量に達しない場合には、受けることができない。
 一 清酒 六十キロリットル
 二 合成清酒 六十キロリットル
 三 連続式蒸留焼酎 六十キロリットル
 四 単式蒸留焼酎 十キロリットル
 五 みりん 十キロリットル
 六 ビール 六十キロリットル
 七 果実酒 六キロリットル
 八 甘味果実酒 六キロリットル
 九 ウイスキー 六キロリットル
 十 ブランデー 六キロリットル
 十一 原料用アルコール 六キロリットル
 十二 発泡酒 六キロリットル
 十三 その他の醸造酒 六キロリットル
 十四 スピリッツ 六キロリットル
 十五 リキュール 六キロリットル
 十六 粉末酒 六キロリットル
 十七 雑酒 六キロリットル

5
発泡酒で脱アルコール製法

 おもしろそうだと思っているのは発泡酒でアルコールを除去する製法をとるという視点です。
 発泡酒の場合に必要な年間生産は上記「酒税法第七条二項十二号」によると6キロリットル(500ml缶1.2万本分)です。ビールの10分の1という数字は魅力的です。

6
ノンアルコールビールと行政書士

 ノンアルコールビールやお酒等と関連する行政書士業務として、飲食店営業許可申請/深夜種類提供の届出/酒類製造免許申請/酒類販売業免許の取得/酒類ビジネスの支援などがあります。
 行政書士の仕事は許認可申請などの行政手続きにフォーカスされがちですが、クライアントやビジネスの総合的な相談役になれる専門職であることが大きな魅力ではないでしょうか。

7
最後に

 ノンアルコールビールの他に、カクテル、ワイン、日本酒などのノンアルコール市場もどんどん広がってきています。
 将来、ノンアルコール専門居酒屋(?)ができて、なぜかお客さんがどこの居酒屋さんよりも酔っているなんてことがあったらおもしろいですね。

-writer profile-
 
高橋和真
  行政書士ネットワーク会員
  学びエイド 鉄人講師

行政書士のほか予備校・学習塾・ネット配信授業の講師として活動。宅建・行政書士・貸金業務取扱主任者試験など国家資格試験の講座を歴任。趣味は数学とフットサル。


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