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コラム

2019.04.04

資金決済法改正に向けて

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はじめに

 金融庁は今年の臨時国会または来年の通常国会において資金決済法を改正する見込みであることを公表しました。具体的には、「銀行以外の送金上限額100万円規制」を撤廃するというものです。
 麻生太郎金融担当相は、「新たな類型により、便利な支払い方法を実現したい」と、改正の最大の狙いが利用者の利便性向上にあることを強調しました。さらに、「この夏までにはとりまとめて、法案を臨時国会か次の国会に出したい」とも語っています。
 現状、100万円超の送金は免許を受けた銀行にしか認められていませんが、2021年半ばを目安に新たな認可制を設けることで、銀行以外の業者も多額な送金業務を担うことが可能となります。

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銀行業とは

 ここではまず、送金業務を深堀りする前に銀行業について簡単にご説明したいと思います。
 そもそも、銀行業とは何を指しているのでしょうか?銀行業には、主に3つの業務があります。それは、「預金」・「融資」・「為替」です。
 「預金」とは、普通預金や定期預金など、個人や法人が銀行にお金を預けることですね。
 「融資」とは、預金や定期積み金を原資にして、他人にお金を貸し出すことをいいます。身近なところでいうと、住宅ローンなどです。
 最後に「為替」です。一般的には、為替と聞くと一番馴染みがないかもしれません。為替とは、「現金輸送を伴わない決済」を指します。例えば、AさんがA‘銀行から、BさんのB’銀行にお金を振り込む、即ち送金するといった行為を為替取引といいます。
 今回のテーマの送金上限額の撤廃は、銀行3大業務の「為替」業務に大きく関係してきます。

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銀行業の免許とは

 銀行業の参入障壁は高いと聞きますが、銀行の免許制度はどのような内容なのでしょうか?
 銀行業の免許は、内閣総理大臣から与えられます。免許の要件としては、例えば「資本金が最低でも20億円以上」あることがあり、莫大な資金力のある企業以外の参入はほぼ不可能な状況です。その他、申請法人の資産構成や自己資本比率規制などの厳しい条件が課せられています。
 このような厳しい免許要件によって、銀行業務は他業界・他業種等から守られてきたといえるでしょう。

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改正の内容および影響

 さて、ここで今回のテーマに戻りましょう。
 今回のテーマは、「銀行以外の送金上限100万円規制の撤廃」というものでした。「送金」の上限を撤廃することは即ち、これまで高い参入障壁によって守られてきた銀行の主要業務の一角を崩すことを意味しています。
 実は、現在も銀行以外の者も100万円以下(1回)の送金業務を担うことは可能です。そのためには、資金決済法に基づき、資金移動業者として内閣総理大臣の登録を受ける必要があります。
 したがって、現行法上で送金業務を行える者としては
➀銀行:送金の上限なし、免許制
➁資金移動業者:送金の上限あり(1回100万円以下)、登録制
の2種類となります。

 そして本改正によって、➁新たな類型が設けられ、送金業者は大きく3分類となる見通しです。
➀銀行:送金の上限なし、免許制
➁新たな類型:送金の上限なし、認可制
③資金移動業者:送金の上限あり(1回数万円以下)、登録制
 つまり、現在の資金移動業者の送金上限額が引き下げられ、新たな認可制度が設けられることとなります。
 本改正が実現すれば、銀行送金のデメリットである送金の遅さや割高な手数料の解消が期待されます。また、不動産や車などの100万円を超える高額送金をする際に、銀行以外の選択肢が生まれることによって新たなサービスが展開されることが予想できます。より顧客本位で革新的な金融サービスを拡充させたいという金融庁の思いの現れともいえるでしょう。

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おわりに

 銀行業にFintech企業などの新興勢力が本格参入するためには、新たな類型の認可や登録が必要となります。
 仮想通貨やFinTech、キャッシュレス決済など金融業界は大きく変わる可能性があります。金融業界には我々行政書士に関わる業務が多いので、今後の動向に注視しておくとよいでしょう。

-writer profile-
大河諒
行政書士ネットワーク事務局
行政書士資格保持者として、民泊やドローン業務を中心に従事。
前職は金融機関に勤務。地域金融機関に対する経営支援業務を担当したのち、資金決済関連システムの開発・保守業務に従事。

[引用・参照]
http://fis.nri.co.jp/ja-JP/knowledge/commentary/2019/20190225.html


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