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コラム

2019.05.21

PayPayとLINE Pay 法律上のキャンペーンの違い

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キャンペーン概要

○PayPay 「100億円あげちゃうキャンペーン」
PayPayで支払いをすると、支払額の20%がPayPayボーナスで還元されるキャンペーンと、40回に1回の確率で支払額の全額がPayPayボーナスで還元されるキャンペーンの2つを、「100億円あげちゃうキャンペーン」として実施。
PayPay→ユーザーに送金

○LINE Pay 「全員にあげちゃう300億円祭」
自己負担なしでLINE上の友達に1000円相当の電子マネーをプレゼントできるもの。何人でも送れるが、一人が受け取れるのは一度(1000円)だけ。期間中であっても、送られた電子マネーの総額が300億円に到達した時点でキャンペーンは終了する。
ユーザー→ユーザーに送金

2
金融庁から受けている免許・許可・登録等

○PayPay株式会社
・前払式支払手段(第三者型)発行者登録(資金決済法)

○LINE Pay株式会社
・前払式支払手段(第三者型)発行者登録(資金決済法)
・電子決済等代行業者登録(銀行法)
・資金移動業者登録(銀行法・資金決済法)

3
それぞれの制度の概要

○前払式支払手段(第三者型)
前払式支払手段(第三者型)発行者とは次の要件を満たす者をいいます。

①金額又は物品・サービスの数量(個数、本数、度数等)が、証票、電子機器その他の物(証票等)に記載され、又は電磁的な方法で記録されていること。
②証票等に記載され、又は電磁的な方法で記録されている金額又は物品・サービスの数量に応ずる対価が支払われていること。
③金額又は物品・サービスの数量が記載され、又は電磁的な方法で記録されている証票等や、これらの財産的価値と結びついた番号、記号その他の符号が発行されること。
④物品を購入するとき、サービスの提供を受けるとき等に、証票等や番号、記号その他の符号が、提示、交付、通知その他の方法により使用できるものであること。

具体的には、商品券やカタログギフト券、Suicaなどの磁気型やIC型のプリペイドカード、インターネット上で使えるプリペイドカード等がこれにあたります。

第三者型発行者(発行前に登録が必要な発行者)とは、 法に基づく登録を受けて発行者以外の第三者の店舗(加盟店、フランチャイズ店等)においても使用することができる前払式支払手段を発行している者をいいます。この場合、発行前に内閣総理大臣の登録を受ける必要があります。

(引用 一般社団法人日本資金決済業協会)

○電子決済等代行業
電子決済等代行業者とは次の行為をする者をいいます。

①複数の振込先への銀行振込の依頼をワンクリックで行うことができるサービス
②預金口座の残高や利用履歴等の情報を銀行から取得・集計し、自動的に家計簿を作成するサービス

具体的にはデビットカードの仕組みのように顧客と店舗の間にプラットフォーム事業者(VISAなど)が入り、顧客の銀行口座から店舗に支払いをすることです。

(引用 金融庁)

○資金移動業
資金移動業者とは銀行等以外のものが100万円に相当する額以下の為替取引を業として営むことをいいます。

資金移動業を営むには、「資金決済に関する法律(以下、法という)」に基づき、事前に内閣総理大臣の登録を受けなければなりません。
無登録で資金移動業(為替取引)を行った場合、銀行法第4条に違反する無免許業者として銀行法上の罰則の適用を受けることになります。

具体的には銀行以外の会社(transferwiseなど)を利用して100万円に相当する額以下の海外送金などを行うことです。

(引用 一般社団法人日本資金決済業協会)

4
キャンペーンの法律上の根拠

○PayPay 「100億円あげちゃうキャンペーン」
まず、PayPayのサービスの仕組みの根拠が資金決済法に基づく前払式支払手段(第三者型)の発行です。
ユーザーは前もってPayPayに対して金銭(対価)を支払い、加盟店で利用可能な金額を受け取り、それを利用するからです。
本キャンペーンでは店舗での利用価格の20%分をPayPayからユーザーにキャッシュバックするというものでした。
前払式支払手段について資金決済法3条1項1号には
「(略)電磁的方法により記録される金額に応ずる対価を得て発行される証票等又は番号、記号その他の符号(略)」
と規定されています。
このことから対価を得ないでキャッシュバックされたものは前払式支払手段に該当しないと考えられます。
よって「100億円あげちゃうキャンペーン」は法的な根拠なく開催できるキャンペーンであったことがわかります。

○LINE Pay 「全員にあげちゃう300億円祭」
LINE Payのサービスの仕組みもユーザーが前もってLINE Payに対して金銭(対価)を支払っていることから、PayPayと同じく資金決済法に基づく前払式支払手段(第三者型)の発行であるといえます。
本キャンペーンではLINE Payのユーザーからユーザーへ1000円分の前払式支払手段を送っていることから資金移動業に該当します。 LINE Payでは前払式支払手段を出金して現金にすることができることが要因です。
よって「全員にあげちゃう300億円祭」は資金決済法及び銀行法に基づくキャンペーンであり、前払式支払手段(第三者型)発行者登録及び資金移動業の登録を受けていなければ成立しないものであることがわかります。

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